不動産登記制度
現行の不動産登記制度は、物権変動の過程を登記簿(登記記録)に如実に反映することも目的のひとつです。不動産登記法は次のように定めています。
不動産登記法第1条 この法律は、不動産の表示及び不動産に関する権利を公示するための登記に関する制度について定めることにより、国民の権利の保全を図り、もって取引の安全と円滑に資することを目的とする。
不動産の所有者が死亡した場合、その所有権は相続人に移転します。ですので、相続人はその不動産について相続による所有権移転登記をすることになります。被相続人から相続人へ権利が移転したことを登記により公示することにより、私たち国民の権利が守られ、その後の売買や抵当権設定等の取引を安全にかつ円滑に進めることになります。
ところが、表示の登記とは違い、権利に関する登記は義務的ではありません。相続物件を売却したいとか、その物件が担保に入っていたり、新たに担保に入れて融資を受ける予定があるなどのことがない限り、その不動産を利用するに際して登記をしなくても何ら不都合は生じません。
権利関係の複雑化
これが相続による登記がなされない場合の大きな理由の一つでした。しかし、登記をしないで長い間時間が経つと所有者(正確には共有者)が増えていき、その権利関係は複雑化する一方であります。分かり易く言えば、被相続人の子や配偶者だけでなく、多くの孫たちや全国に(外国にも)散らばった兄弟姉妹やその子たちが相続権を持つことになります。そこで、その者たちの調査や意思決定(分割協議)は困難を極めることになります。
空き家の社会問題化
現在、全国的に空き家問題が叫ばれ、また先の東日本においての大震災などの際には、所有者が不明であったり、不明でなくても所有者の所在が分からないことから、その不動産の管理や処分を適切に行えず、インフラの整備や災害復興のための公共工事にまで支障が出るという多くの事例が起きました。このように登記の懈怠は、所有者個人の問題にとどまらずに社会問題にまで発展してきているのが現状です。
相続登記の義務化
そこで、令和6年4月1日から相続登記が義務化されることになりました。内容は、相続人が自己のために相続開始したことを知った時から3年以内(正当な理由がある場合は別)に相続登記をしなければならないことになります。そして、正当な理由がないのに相続登記をしない場合には、「10万円以下の過料が科される可能性がある」という罰則の規定もあります。
なんだか、面倒くさいですが、やはり、やるべき手続きはやっておいたほうが良いのでしょうね。
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